●木曽の「寝覚の床」の浦島太郎伝説
浦島太郎の伝説は、沖縄県から福島県まで全国各地に残っています。 その内容も、出自に関わるものから墓地まで、それはもう様々です。
寝覚の床に残されている浦島伝説は、太郎が竜宮城から帰り、玉手箱を開くまでが描かれています。
…竜宮城の夢のような日々から現実に帰った太郎は、竜宮城にいたひとときが300年であったこと、周りに自分のことを覚えているものがいないことに驚き、やがて諸国漫遊の旅路に出ます。
一説には、竜宮城から持ち帰った秘宝の中の飛行の文書で寝覚の床までやってきたとか。
寝覚の床の風景を気に入った太郎は、魚釣りをしたり、竜宮城の巻物を参考に仙薬を作って地元の住民に分け与えたりしながら暮らしていました。
ふとある時、竜宮城から玉手箱を持ち帰ったことを思い出します。
決して開いてはならないと忠告されていましたが、太郎は玉手箱を開いてしまいました。すると中から紫色の煙が立ち上り、太郎はたちまち300歳の翁の姿に…。
太郎は嘆き悲しみ、やがて寝覚の地から姿を消してしまいました。そして寝覚の床には人知れず弁財天の像が残されており、これを祀って建立されたのが、臨川寺といわれています。
…ちなみに、長野県上松町の公式キャラクター「太郎ちゃん」も、この浦島伝説を参考にしています。
●寝覚の床
長野県上松町周辺は、花崗岩地帯。その地形を木曽川の流れが削り、姿を現したのが寝覚の床です。花崗岩特有の割れ方が、大きな箱を並べたような不思議な造形をもたらしました。
また明治以降は水力発電や用水の引水で木曽川の水面が低下し、岩の巨大さがより引き立っています。
1923年に国の名勝に指定され県立公園として管理されてきましたが、2020年に中央アルプス国定公園へ昇格しました。この地には、古くから浦島伝説が残されていることも特徴です。
公園付近は春に桜が咲き、秋には対岸の山々が紅葉で色付きます。
■臨川寺
国道19号のすぐ近く、寝覚の床を見下ろすように立つ臨済宗妙心寺派の寺。浦島太郎が年老いた自分の姿をなげいて旅立ってしまったが、後に残されていた弁財天の像を祭ったのが開基の由来という。境内には松尾芭蕉、正岡子規、種田山頭火の句碑、姿見の池、宝物館などがあり、奥の降り口から寝覚の床への近道が通じている。宝物館には浦島太郎が置き忘れたという愛用の釣竿[つりざお]や硯などを展示。
住所: 長野県木曽郡上松町上松1704
(拝観料200円)