中央アルプスでのライチョウ復活を目指す環境省信越自然環境事務所(長野市)は2日、駒ケ岳にすみ着いた雌1羽に抱かせた卵8個が全滅したと発表した。6月30日と7月1日に調査。卵5個はふ化していたが、死んだひなや卵が巣近くに散乱していた。ふ化直後に猿が巣に近づく様子がセンサーカメラに映っており、驚いた雌やひなが巣から飛び出したことが原因とみている。
同事務所は6月7日、県内外の動物園など4施設から提供された有精卵8個を、雌が抱いていた無精卵と入れ替えた。ふ化予定日は30日と7月1日だった。巣の周辺5メートル以内にひな5羽の死骸、離れたところに卵2個を確認。1個は巣にあり、雌が温め続けていたが死んでいた。近くに置いていたセンサーカメラには29日午後6時台に、少なくとも10匹の猿の群れが映っていた。雌は近くで確認した。
調査に同行した信州大名誉教授中村浩志さんの分析では、29日午後にひながふ化。直後に猿がやってきて巣をのぞきこんだため、雌やひなが巣を飛び出し、体温調節ができないひなが冷えて死んだ。猿が残った卵を取り出して捨てたと考えている。ひなの死骸に外傷はなく、卵2個は割れていたがふ化中だったとみている。
同事務所によると、猿の群れは例年7月下旬ごろに山頂近くまで登るが、6月中はまれ。「飼育下のライチョウの卵を野生に返す初の取り組みで、ふ化したところまでは成功だったが残念。猿の群れの対策は難しいが、産卵からふ化までの保護策も含め考える」としている。
7月下旬に北アルプス乗鞍岳からライチョウの親子3組20羽程度を中アに移住させる計画は、予定通り行う。
(信毎WEB版 2020年7月3日)