JR東海は三日、リニア中央新幹線南アルプストンネルを掘り進めるための作業用トンネル坑口「釜沢非常口」(大鹿村釜沢)の掘削を始めた。
同トンネル長野工区は、三つの作業用トンネルを掘り進めた後、地質、湧水調査のための小規模なトンネルである先進坑と本坑を掘る。作業用トンネルはリニア開業後、本線から地上に出るための非常口となる。
釜沢非常口は当面、重機で掘り進め、地質の状況に合わせて発破を用いる。掘削断面は幅約七メートル、高さ約六メートル、全長三百五十メートル。長野工区の工事では約二百三十万立方メートルの残土が出る見込みで、同社は村内に仮置きをした後、最終処分場に搬送する。最終処分先は未定。
他の二カ所の非常口は二〇一七年七月までに掘削が始まったが、釜沢非常口は保安林解除に向けた林野庁との協議などで開始がずれ込んだ。JR東海の担当者は「工期に影響はない」と説明。工事前の環境影響評価で「掘削が影響を与える可能性がある」とした同地区の水源については「一月から観測用井戸を二カ所設置しており、代替水源確保について村や地区住民らと話し合っている」とした。
リニア中央新幹線南アルプストンネルの掘削で大鹿村から発生する残土を運搬するダンプカーの通行予定に関する住民向け説明会が三日夜、中川村の渡場会館であった。
飯田市リニア推進部の職員や同村の宮下健彦村長、地元住民などが出席。渡場地区が、同市の県駅周辺整備などで移転を迫られる住民の移転代替地造成に使われる残土を積んだダンプカーの通行経路になっていることから、市の担当者が通行時間や台数などを説明した。
同市によると、ダンプカーが通行するのは今月中旬から今年九月まで。通行は原則、平日と土曜、祝日の午前八時半~午後五時で、一日の通行台数を片道二十台までとした。
経路は、同地区の渡場交差点を通る松川インター大鹿線を使用するが、県が工事を進めている小渋川の河川内道路が四月末に完成すれば、大鹿村-松川町方面に限って河川内道路を使用。一日の通行台数を片道百台まで引き上げる。
地域住民からは「残土を積載する空のダンプや関係車両が児童や学生の登校する午前七時半前に通る恐れがある。必ず時間を守ってほしい」「ダンプ同士がすれ違う時にクラクションを鳴らしてあいさつするのをやめてほしい」などの要望が上がった。
中日新聞長野WEB版 2020、03、05付