貴族の食文化としてヨーロッパで発展したジビエ。長野県でも古くより貴重なタンパク源として、鹿、猪、熊、雉などの肉が食されていて、近年では、環境や農業などの被害の深刻化を受け、食材としてのジビエが改めて見なおされています。狩猟解禁期間(11月15日〜2月15日)のジビエのおいしい季節にあわせ、信州ジビエフェアも開催中。たっぷり冬の新定番をお楽しみください。
「長野県にも冬にジビエを食べる文化が浸透してきている今だからこそ、皆にとってよい環境をつくるためにも、僕ら飲食店がおいしいジビエ料理を提供しなきゃという思いがより強くなりました」
ジビエの魅力を広めるためにも狩猟時期や部位、雄雌などで異なる肉の旨みやおいしい食べ方を伝えるなど、その下地をつくっていきたいと語ります。
「まだジビエ料理は高額なものが多いですが、自分で獲った食材なら手頃な価格で提供でき、より多くの人に食べてもらえます。だからもっと猟師としての腕も磨かないといけないですね」
ジビエの安全性について一定のガイドラインが定められ、各地でジビエ加工施設が整ってきている長野県。「信州ジビエ」の流通量も注目度も格段に高まっています。でも、肉を削いだ後の鹿の皮ってどうなるの? 革として使えるのでは?
そんな思いから生まれたのが「けもかわプロジェクト」です。代表の井野春香さんは熊本県で生まれ育ち、高校・大学と畜産や森林環境を学ぶ中で猟師と出会い、野生動物をより身近に感じるようになりました。そして、猟師と関わりながら子どもたちに自然体験を提供する南信州の山村、泰阜村(やすおかむら)のNPO法人に就職。仕事を通じ「もっと地域に根ざし、猟や鹿に携わる仕事をしたい」と思い目をつけたのが、鹿の皮の活用でした。
「皆が捨ててしまう皮を活用すれば、より鹿の命を大切にでき、地域にも役立てるのでは」
こうして2012年に鹿の皮を使ってクラフト製品を作るプロジェクトを立ち上げたのです。
長野市に県下最大規模のジビエ加工施設が誕生
長野市では野生鳥獣による農作物被害対策の一環として、捕獲した猪や鹿の受入から解体、熟成、パック詰めや冷凍保存までの一連の加工処理及び、在庫・販売管理を一貫して行う「長野市ジビエ加工センター」を2019年4月に開設。1頭ごとに詳細な記録と健康チェックを実施して個体識別番号を付与する「ジビエ商品管理システム」を導入し、食品トレーサビリティーにより安全・安心なジビエの安定供給を図っています。
信州から直送した上質な鹿肉を丁寧に調理し、リーズナブルに提供
松本市出身の店主が信州食材にこだわり、さまざまな山の幸や郷土料理を堪能できる居酒屋。鹿肉は確かな加工技術をもつ伊那谷のジビエ加工施設から仕入れ、居酒屋ならではの手頃な価格帯で提供しています。看板メニューのひとつ「鹿肉のロースト(990円)」は臭みがなくて食べやすく、赤身肉の味わいがしっかり感じられる内もも肉を使用。低温調理で柔らかく仕上げています。「鹿肉のコロッケ(330円)」はスジ肉を圧力鍋で柔らかくして醤油ベースの甘辛のしぐれ煮にし、潰したジャガイモで包んだ手間ひまかけた一品です。ほかに信州の地酒は常時20種類ほど。クラフトビールやワイン、焼酎、ウイスキーも信州産が揃います。